運動選手が運動能力を高めるために使用することもあるヒト成長ホルモン(GH)の注射が、アンチエイジング(老化制御)のために有用であると信じている人もいるが、健康な成人におけるヒト成長ホルモンの研究では、リスクが有益性を大幅に上回っていることが示唆されている。

ヒト成長ホルモンは下垂体で作られる蛋白(たんぱく)で、組織や器官の正常な発達や維持、特に小児期の正常な成長に重要だが、40歳代に入ると減少し始める。米バレーValleyメディカルセンター(カリフォルニア州サンノゼ)のHau Liu博士は「データを見る限り、成長ホルモンは若さの源泉(fountain of youth)ではない」と警告している。

Liu氏は、昨年(2007年)、米医学誌「Annals of Internal Medicine(内科学)」に掲載された、健康な高齢者を対象とした成長ホルモン使用に関する研究の筆頭著者。同氏らの研究では、成長ホルモンの使用は、身体組成(body composition)のわずかな変化と関連性を示したが、他の重要な健康に関するアウトカム(成果)に変化は認められなかった。

また、成長ホルモンの使用者は使用していない人に比べて、軟組織の腫脹や関節痛が多く、血糖コントロールの不良や糖尿病のリスクも増大していた。Liu氏は今後も研究を拡大する予定だが、「寿命を延ばす最も良い方法は、運動と良い食事、禁煙である。これらは生活の質(QOL)を向上させ、長い健康な人生を送れる可能性を高める真の治療法である」と述べている。

米国では、小児の低身長や成長障害に対する合成ヒト成長ホルモンの使用は承認されているが、アンチエイジングなど適応外(off-label)使用のための販売は禁じられている。しかし、一部の医師による金銭目的の処方は後を絶たず、アンチエイジングのために成長ホルモンに月1,000~2,000ドル(約10万7,000~21万4,000円)を費やす患者もいる。

米バージニア大学ヘルスシステム(バージニア州シャーロッツビル)内科・脳神経外科教授のMary Lee Vance博士は「法的手段による脅しが、成長ホルモンの不適切な使用を抑制する唯一の方法だと思う」と述べ、患者に有害である可能性を危惧している。同氏によれば、老化制御のために成長ホルモンを使用し、6カ月後に心臓発作で死亡した例もあるという。米国臨床内分泌学会(AACE)は、現状で成長ホルモンをアンチエイジング薬として使用することはないとしている。

出典:健康美容EXPO