アンチエイジング(抗加齢)の研究で、「カロリーリストリクション(CR)」という考えに注目が集まっている。CRとは、栄養分を確保しながら、食事の摂取カロリーを通常の6~7割に制限すること。老化防止につながり、健康で長生きできる体をつくるという。9月には医師らが中心になり、「CRソサエティ・ジャパン(アンチエイジングを実践する会、愛称・カロリスジャパン)」を発足。世界有数の長寿国である日本で、さらに人々の寿命を延ばそうと研究成果の啓発に力を入れている。


≪2~3割長生き≫

 カロリー制限で寿命を延長できることが米国の研究者によって初めて示されたのは1935年。マウスやサルを使った動物実験では、タンパク質、脂質、炭水化物に加えて必須ビタミン、微量のミネラルなどの栄養分を確保しながら、総摂取カロリーを通常の65%程度に落とすことで、寿命が約1・5倍伸びたというデータが得られている。

 また、アカゲザルを使った実験では、カロリーを30%制限して飼育したサルは、制限のないサルに比べ、毛につやがあり、シワもほとんどないなど、外見上も大きな違いがあることが分かっている。

 同会メディカルアドバイザーの一人、順天堂大学大学院医学研究科の白沢卓二教授(加齢制御医学)は「動物実験の結果から、ヒトでもカロリー制限することで(寿命で)2~3割長生きできるだろうと考えられている」と話す。

 約10年前から寿命の研究をしている白沢教授は「100歳を超えても元気な長寿者には、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人がほとんどいない。長寿者は70、80代でいきなり若々しくなるわけではない。40、50代からの積み重ねによって、年をとっても若々しく健康を保っている」とし、長寿者に共通していえることとして「適度な食事」「運動」「生きがい」の3点を挙げる。


≪腹八分目≫

 カロリー制限の食事といっても、日本人の1日の食事摂取量は、米国人に比べればかなり抑えられたものであることが分かっている。米国CRソサエティのボブ・カバナフ氏が、身長、体重などの違いを考慮した上で、現在、米国で適切とされる1日のカロリーと、日本人、米国人それぞれの実際の平均摂取カロリーの差を出したところ、日本人は8・9%少なく、米国人は逆に16・0%多いという結果だった。

 同会チーフメディカルアドバイザーで慶応大学医学部の坪田一男教授(眼科学)は「日本が世界有数の長寿国なのは長年、カロリーを抑えた食生活をしてきたことと無関係ではないだろう。食べたいものを食べたいだけ食べるのをよしとする米国人に対し、日本では『腹八分目』という言葉があるように、日本人は昔からCRの考えを取り入れた食生活をしてきた」と話す。

 ただ、日本でも、とくに中高年男性に肥満や生活習慣病が増えていることを考えれば、10年後、20年後の日本人が今の高齢者のように健康で長生きできているとはかぎらない。


≪減らしすぎは弊害も≫

 CRで健康な長寿を実現するには、その人の体格や年齢、活動量に見合ったカロリーがどの程度かを正しく把握することが大事だ。日本では、若い女性のやせ過ぎが問題になっているだけに、本当にカロリー制限が必要かどうか見極めた上で取り組む必要がある。

 坪田教授は「カロリー制限が体にいいといっても、誰もがカロリーを6~7割減らせばいいというものではない。減らしすぎは骨密度や免疫機能を低下させる危険もある」と指摘する

 その上で、「アンチエイジングの基本はやはり食事。心臓病や脳卒中など加齢に伴って起きやすい病気を避けるためにも、まずは自分の食事が適切かどうか見直してほしい」と話している。

 同会は一般会員を募集している(入会金2000円、年会費1万円)。会員には年1回のイベント参加資格が与えられるほか、年6冊の日本抗加齢学会誌の送付などで健康情報を提供する。問い合わせはカロリスジャパン事務局TEL03・5775・2075。

出典:MSN産経ニュース